2012年12月31日月曜日

共通番号に起因する成りすましと名寄せのトレードオフの発展的解消

共通番号には、名寄せの危険がある→名寄せを防ぐためオープンにはできない→知っているのは一部の人だけ→本人確認に使おうというインセンティブ→実際に使われる→成りすましが問題となる

共通番号による成りすましの問題を防ぎたい→共通番号をオープンにする→名寄せの危険性が高い

共通番号による成りすましの問題を防ぎたい→共通番号を本人確認に使うことを禁止する→ますます秘密っぽくなる→本人確認に使うインセンティブが高まる→結局使われる→成りすましが問題になる

共通番号には、名寄せの危険がある→個人情報と一緒に記録するのは禁止する→共通番号の代わりにリンクコードで記録する→共通番号をオープンにできる→共通番号に起因する成りすましの問題は発生しない(そもそも氏名と住所とかだけでも成りすましは可能だが増えることはない)

最後が一番筋が良い。
あたりまえか。

2012年12月30日日曜日

マイナンバー法案勝手修正案逐条解説:第12条の2(真正性確認の措置)

(真正性確認の措置)
第十二条の二 個人番号利用事務実施者は、第十三条の規定により本人、代理人、個人番号関係事務実施者及び第十一条第二項の規定により機構保存本人確認情報の提供を求めることができる者として政令で定める者以外の個人番号利用事務実施者から提供を受けた個人番号を利用して処分(行政手続法(平成五年十一月十二日法律第八十八号)第二条第2号に規定する処分をいう。)をする場合、特定個人情報を提供する場合、その他政令で定める場合には、機構に対し機構保存本人確認情報の提供を求めることその他個人番号が住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第八の二号の規定により本人の住民票に記載されている個人番号又は記載されたことがある個人番号であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。


本条は、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。以下同じ。)を利用して処分を行う場合、特定個人情報を提供する場合においては、個人番号の真正性を確認することが必要である旨を定めるものである。他の行政庁及び独立行政法人等(以下「行政庁等」という。)から提供を受けた特定個人情報に含まれる個人番号は、既に情報を提供した行政庁等により真正性の確認が行われていることから、真正性の確認を必須とはしていない。
第12条により、本人確認は行われていても、個人番号の記載間違い等はありえ、記載間違い等があった場合の影響は極めて大きいため、真正性の確認の措置を本条で具体的に定めるものである。番号大綱においては、『その他法令の規定に基づい て書面に第三者の「番号」の記載を求められる者は、 「番号」の 告知を受ける際、本人確認を行うとともに、 「番号」の真正性を 確保する措置を講じるよう努めなければならない。 』と個人番号の告知を受ける際に真正性の確認を行う方針としていたが、その立法化が取りやめられたため、他の方法にて個人番号の詐称や記載間違いを防ぐことを担保することが本条の目的である。(後述するように、担保されていることをマイナンバー法の中で示すことが本条の目的であり、法体系全体としては本条がなかったとしても真正性の確認は確保されている。)
ただし、本条は特に行政庁に新たな義務を定めるものと解されるべきものではなく、行政手続法第7条及び第37条に規定される申請書及び届出書の記載事項に不備がないことを確認する措置を個人番号に関して具体的に定めるものである。独立行政法人等については、行政手続法の対象とはなっていないが、記載事項に不備がないことの確認措置は独立行政法人等でも行われており、本条はその事務負担を増やすものではない。本条の規定が定められていなくとも、個人番号の記載不備は極めてその影響が大きいことから、行政手続法に基づき、行政庁はその確認措置(真正性の確認の措置)を行う義務があると考えられる。本条が第180回国会に提出された時点では含まれていなかったのは、そうした理由からである。
いわんや、本条は全ての届出書について個人番号の真正性の確認を求めておらず、公権力の行使にあたる場合、他の行政庁等に特定個人情報を提供する場合等に限定している。そうした点では、本条は行政手続法第37条が求めている事務の水準を明確にすることで行政庁の事務負担軽減を意図した規定と解される。
また、本条は個人番号の提供を新たに受けるたびに機構保存本人確認による確認を求めていると解する必要はない。過去に確認しことがある者については、その際の個人番号と一致していることを確認するのみで足りる。そのため、住民票に記載されたことのある個人番号であれば良いとの規定となっている。個人番号は繰り返し使用されることはないため、記載されたことがある個人番号であることが確認できれば、他人の情報が本人の情報とされることはない。

(本投稿はパロディです)

2012年12月25日火曜日

マイナンバー法案勝手修正案逐条解説:第6条の2(行政機関個人情報保護法等に係る特例)

★案1
(行政機関個人情報保護法等に係る特例)
第六条の二 別表第一の上欄に掲げる者(法令の規定により同表の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。第三項において同じ。)は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保有する特定個人情報を、別表第一の上欄に自らが掲げられている列の下欄に掲げる事務のために、当該事務を行うために必要な限度で利用することができる。別表第一の当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
2 地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第四号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報を別表第一の上欄に自らが掲げられている列の下欄に掲げる事務のために、当該事務を行うために必要な限度で利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
2の2 地方公共団体の長その他の執行機関は、別表第一の上欄に自らが掲げられている列の下欄に掲げる事務のために保有する特定個人情報を福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第四号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理のために、当該事務を行うために必要な限度で利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
3 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十八条若しくは第百九十七条第一項、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第五十九条第一項から第三項まで、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条、第二十九条第三項若しくは第九十八条第一項、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第九条の四の二第二項、第二十九条の二第五項若しくは第六項、第三十七条の十一の三第七項、第三十七条の十四第九項、第十三項若しくは第十五項若しくは第四十一条の十二第二十一項若しくは第二十二項、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第五十七条第二項若しくは第二百二十五条から第二百二十八条の三まで、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第七条又は内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(平成九年法律第百十号)第四条第一項その他の法令又は条例の規定により、別表第一の上欄に掲げる者又は地方公共団体の長その他の執行機関による第一項、第二項又は前項に規定する事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の他人の個人番号を利用した事務を行うものとされた者は、自らが保有する特定個人情報を別表第一の上欄に自らが掲げられている列の下欄に掲げる事務のために、当該事務を行うために必要な限度で利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。


★案2
(行政機関個人情報保護法等に係る特例)
第六条の二 前条第一項から第三項により個人番号を利用できるとされたものは、個人番号を利用可能とされた事務を処理するために必要な限度で自ら保有する特定個人情報を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。



マイナンバー法案修正案第6条の2は、行政庁及び独立行政法人等が自らが保有する特定個人情報を取得時点での利用目的(情報を提供した本人が認識している利用目的)以外の目的のために利用できることを明確にするための規定である。本条により、利用目的以外の目的に特定個人情報を利用して良いことが明確になり、マイナンバー法の初期案の特定個人情報の目的外利用が可能であることが必ずしも明確ではないという予見性の低さが解消される。これにより、マイナンバー法に係る訴訟費用の節約に資すると期待される。
本条は、立法趣旨を蛇足的に明文化したものであり、特にマイナンバー法案の内容に変更を加えるものではない。本条の規定がなかったとしても、特定個人情報を行政及び独立行政法人等は個人番号利用事務に自ら保有する特定個人情報を利用することができる。
本条の規定が存在しなかった場合の行政訴訟リスクについては、第3条第3号の解説も参照のこと。

(本投稿はパロディです)

2012年12月22日土曜日

マイナンバー法案勝手実態解説:第56条(住民基本台帳法から規定を移してでき たマイナンバーカード)

マイナンバー法案第56条は、市町村長に個人番号カードを交付しなければならない義務を定める。しかしながら、これは市町村長の新たな事務を定めるものではない。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(以下「整備法案」という。)により、住民基本台帳法におけるマイナンバー法案とほぼ同内容の住民基本台帳カードに係る第30条の44の規定が削除される。すなわち、個人番号カードはその規定を住民基本台帳からマイナンバー法に移し、名称を住民基本台帳カードから個人番号カードに変更したものといえる。
個人番号カードと住民基本台帳カードの主な違いは、下表に示されるように、住民基本台帳カードには住民票コードがそのカード内部のICに記録されるのに対して、番号カードの場合には表面(裏面を含む。以下同じ。)に個人番号が記載されることである。個人を一意に識別することができる番号又は符号の記録又は記載箇所をカード内部のICから表面に変更したものが番号カードといえる。その他、委任先が政令か省令かの変更等が行われているが、本質的な規定の違いはない。ほぼ、個人番号カードは住民基本台帳カードの名称変更といえる。
立法過程において(番号大綱において)、「ICカードの交付方法については、 その交付対象者が当該対象者であることを確認し、かつ、交付対象者に確実に交付されるよう法令で規定し、成りすまし防止を徹底する必要があると考えられる。」とされていたが、そのための特段の規定はマイナンバー法案にはおかれていない。また、第2条において、「本人確認の簡易な手段を得られるようにするために必要な事項を定める」とされているが、そのための特段の規定はマイナンバー法にはおかれていない。





個人番号カードに係る市町村長の義務は、マイナンバー法案に規定されている上記のみではない。整備法案により公的個人認証法(電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律)の改正が行われる。その内容は、下表のとおりである。電子証明書の公開鍵(利用者署名検証符号)と秘密鍵(利用者署名符号)を生成するためのシステムを提供するだけでなく、公開鍵と秘密鍵を作成し、個人番号カードに電子証明書と共に記録することが市町村長の事務となる。また、従来1種類であった電子証明書が、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2種類に増える。
その他、通知先が都道府県から機構に変更されているが、現在の公的個人認証法でも都道府県の事務は機構に組織変更される指定認定機関に委託されていることから、主に立法技術上の変更であり、実質的な変更はない。
(本ブログは全体としてみれば立法技術上のパロディが多いので、この変更についてもそのうち時間があれば書いてみたいと思います)




(本投稿は個人的な見解です)

2012年12月15日土曜日

マイナンバー法案勝手逐条解説:第2条第7項


第二条 7 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第四条、第五条、第五十六条第一項及び第六十二条並びに附則第三条第一項、第二項及び第四項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

第2条第7項は、本法の対象となる「特定個人情報」の意義を定めるものである。具体的には、個人番号以外の、個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のもの及び個人番号を含む個人情報を特定個人情報と定める趣旨である。

特定個人情報の外延について
本定義を個人情報の定義である行政機関個人除法保護法第2条第2項『この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報になるものを含む。)をいう。 (他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることと 含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの』と比較すると、個人情報の定義の場合には他の情報と照合することによって個人を識別することができる場合が含まれているのに対して、特定個人情報の場合には他の情報と照合することによって個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。以下同じ。)を把握できる場合が含まれていない。したがって、照合によって当該個人情報の個人番号が把握可能であっても、当該個人情報に個人番号が含まれてさえいなければ特定個人情報とはならない。
このため、個人情報以上に特定個人情報の場合は行政庁及び独立行政法人等はその外延を明確化する必要が生じる。個人情報の場合は、照合によって個人を識別できれば個人情報であるため、外延を明確化しなくても、個人情報にあたるか否かの判断が可能である。一方で、特定個人情報の場合にはその中に個人番号が含まれるか否かによって特定個人情報か否かが定まるため、外延を明確化しなければ特定個人情報か否かが定まらない。行政及び独立行政法人等の義務は特定個人情報か否かによって大きく変わるため、この判断を行うことは必須と考えられる。
一方で、個人情報の外延を定めることは極めて難しい。例えば、総務省行政管理局による行政機関個人情報保護法の逐条解説では、以下のように説明されている。

(参考2)個人情報の外延について
「個人情報」は、通例は特定の個人を識別可能とする情報と当該個人の属性情報からなる「一まとまり」の情報の集合物である(このため、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と規定している。)。この「一まとまり」の範囲は、情報の内容、事務の性質等から総合的に判断されるべきものである。開示、訂正、利用停止等の場面において、どこまでが開示請求者に関する保有個人情報となるのかは、形式的には決め難い。とりわけ行政文書に散在的に記録されている個人情報の場合実務上問題となる。本法では、開示請求を行う者は、開示請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項を開示請求書に記載することとしており(第十三条第一項第二号)、また、行政機関は、補正の参考となる情報を提供するよう努めることとしている(同条第三項)。このような請求手続の過程において、対象となる保有個人情報の範囲が特定されることが、円滑な運用を図る上で不可欠である。


この説明では、請求手続きの過程において対象となる個人情報の範囲が特定されることが円滑な運用を図るうえで不可欠とされている。前述したように、個人情報かいなかは外延が定まらなくとも可能なため、個人情報の場合には開示請求等が行われた後に個人情報の「一まとまり」の範囲を特定すればたりる。一方、特定個人情報の場合には、それを保有した段階から「一まとまり」の範囲を特定しなければ運用を行なえない。したがって、各行政庁及び独立行政法人等はその内規、事務規定等において個人情報の「一まとまり」の範囲を特定することが必要になると考えられる。

個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号について
本法には明文規定が置かれていないものの、個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号として想定されているのは、第2条第13項により定義され、第19条第1項に基づき総務大臣が管理する情報提供ネットワークシステムが個人番号に代わって用いる符号である。第17条第7号に基づき情報提供を求める場合には、当該符号を用いて本人を特定することが予定されている。また、第19条第2項に基づく特定個人情報の提供の求めがあった旨の通知は符号を用いて行われる予定である。そのため、第20条に基づき特定個人情報の提供を行えるようにするには保有する個人情報に符号を加え特定個人情報としておく必要がある。
一方、各行政庁の内部のみや各事務の種類毎に行政庁を横断して用いている番号、記号その他の符号については、照合することによって個人番号に代わって用いることが可能であっても、実際に用いておらず、また用いる意図が無ければ、個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号ではないため、当該番号、記号、その他の符号が含まれていても特定個人情報となることはない。並列に用いる場合には、代わって用いるわけではないので、個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号にはあたらないと解される(情報提供ネットワークで用いる符号は個人番号を直接利用しないために用いるものであるため、個人番号に代わって用いられる符号と解される)。
ここで留意が必要となるのは、他の事務で同じ従来から行政庁の内部で個人に関する情報を管理するために用いていた番号、記号、その他の符号を情報提供ネットワークシステムが用いる符号に代わって用いる意図をもちまた実際に利用する場合でありえることである。この場合に当該個人情報を特定個人情報として扱う必要があるかどうかを行政庁及び独立行政法人等は自ら判断する必要がある。
一方で、情報提供ネットワークシステムが用いる符号と同様に住民票コードから生成された符号や個人番号から生成された符号であっても他の組織に個人情報の提供を求めるために使う意図がなく、また、可逆的な生成方法を用いたり符号変換テーブルが整備されていたりしない場合で、組織内で特定の利用目的にのみ用いる場合には、生成方法が個人番号に関わっているのみで、個人番号に代わって用いられるわけではないのので、第2条の個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号と解されるものではない。


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(本投稿はパロディです)

2012年12月9日日曜日

マイナンバー法案勝手逐条解説:第3条第3号

第三条 個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として行うものとする。

三 個人又は法人その他の団体から提出された情報については、これと同一の内容の情報の提出を求めることを避け、国民の負担の軽減を図ること。


本条は、個人番号及び法人番号を利用する際の心構えについて規定するものである。本条の最大の特徴は主語が明示されていないことである。これは、基本理念を示す条項において一般的な特性である。行政庁及び独立行政法人等は、本条の対象か否かを自ら判断することが求められる。また、簡易な手続きを設けるためには新たな法律や既存の法律の改正が必要な場合もあり、行政機関における法制に関する事務の実施に際してや立法府に対するメッセージでもある。ただし、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者に対する義務を規定していると解してはならず、立法趣旨を示したものと理解すべき条項である。

第3条第3号は、行政庁及び独立行政法人等全体として、同一の情報の提供を求めることによって国民に負担をかけないようにすべきという趣旨が述べられているものである。
法人情報の利用については、個人番号のような「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)」のような保護規定が存在しないことから、みだりに利用することは避けるべきであるものの、同一の内容の提出を避けるために利用することには問題はないと考えられ、行政庁及び独立行政法人等は法人の負担を減らすよう取り組みを進めていくことが求められる。

一方、個人情報については、個人情報保護法により(行政機関以外の場合は省略)、「行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」とされており、異なる行政機関が取得した情報及び同一行政機関においても異なる目的(事務が異なれば異なる目的で取得したと解される)で取得した情報を利用することはできない。この点について、マイナンバー法案はその第24条第1項において、個人番号を含む特定個人情報の場合には以下のように個人情報保護法第8条を読み替えるように規定する(独立行政法人等についても同様の規定が置かれている)。これにより、法令に基づく場合であっても、利用目的以外の目的のための保有特定個人情報を利用することはできなくなる。また、本人の同意があっても利用できなくなる。他の事務で取得した情報を国民の負担を軽減するために利用するには、目的外に利用しなけれればならず、この点が第3条第3項を旨とし行政事務を行う場合には課題となる。

読み替え後の個人情報保護法第8条
第八条  行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
2  前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。
一  人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、るとき、又は本人に提供する又は本人の同意を得ることが難しいとき。
二  行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
三  他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
四  前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

3  前項の規定は、保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。
4  行政機関の長は、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、保有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部局又は機関に限るものとする。

この点につき、マイナンバー法案は同一の内容の情報の提出を求めることを避け、国民の負担の軽減を図れるようにするために他の行政庁及び独立行政法人等から情報を入手することを可能としている。まず、第17条第7号において、情報提供ネットワークシステムを使用して特定個人情報を提供することを可能としている。次に、第19条第2項において、総務大臣は情報の提供の求めがあった旨を通知しなければならないことを規定している。最後に、第20条第1項において、求めを受けた者は特定個人情報を提供しなければならないことを規定している。他の法により書面の提出を義務づけらられている場合にも、第20条第2項において「当該書面の提出があったものとみなす」との規定が存在するため、文書の提出を求めることは不要となる。このように、提出をもとめる必要がある情報を他の行政庁及び独立行政法人等が保有している場合には第3条第3項を旨として事務を進めることができる。個人情報保護法第8条から「法令に基づく場合を除き」の文言が削除されているとしても、マイナンバー法は個人情報保護法に対して特別法であり、また後法であるから、マイナンバー法案が当然優先される。

一方、自ら(行政庁)の異なる事務を行う補助機関が情報を保有していたり、独立行政法人等の異なる事務で情報を保有していたりする場合に、その情報を利用できるか否かについては、以下の2つの立場がある。
第一の立場は、論理解釈を行うものであり、マイナンバー法案の立法趣旨及びその目的である「手続の簡素化による負担の軽減」を実現するためには、自ら保有する情報を利用することが最も実現が容易な方法であり、他の行政庁及び独立行政法人等の情報の利用でさえ可能なのであるから、当然に自らが保有する情報の利用は可能という立場である。
第二の立場は、文理解釈を行うものであり、個人情報保護法の読み替えにより、本人の同意があってもそのそもの利用目的外には利用できないと読み替えが行われているのであるから、情報の提供を求める代わりに本人の同意を求め、同意を得た場合であっても利用はできないという立場である。第6条の規定により、「個人情報を効率的に検索し、及び管理」するために個人番号の利用が可能であり、個人番号を利用して情報の提供の求めを省略できる情報が存在することは確認することができるようになるが、それによって確認された特定個人情報を情報取得時の目的外に利用可能とするとの規定はマイナンバー法案には存在せず、利用はできない。特定個人情報ではない個人情報であれば本人同意により利用可能となるが、特定個人情報の場合には個人情報保護法第8条の読み替えにより、本人同意を得ても当初の目的外には利用できない。したがって、他の事務で提供を受けた情報を利用することはできない。また、自ら保有する情報を利用する場合には、第20条第2項における「当該書面の提出があったものとみなす」との規定もおかれていないため、書面の提出は引き続き必要と考えられる。
総務省が実施している研究会の資料では、マイナンバー法案「別表第1に規定する事務」では「利用が可能」、「地方公共団体の独自の事務」では「第6条第2項に基づき条例を制定すれば可能」とされており、わが国政府は第一の論理解釈の立場を採用していると考えられる。また、内閣官房社会保障改革担当室が地方公共団体向けに行った説明資料「マイナンバー法案についての地方公共団体向け説明会」資料(平成24年6月20日) でも「自治体内の同一執行機関におけるマイナンバー情報の利用は可能」とされている。ただし、こうした解釈は行政訴訟等において司法の判断を完全に制約するものではないため、行政庁及び独立行政法人等が第一の立場において国民の負担を軽減するための善意から特定個人情報の目的外利用を行う場合には、第二の立場がありえることも配慮の上、その実施を行うことが必要になると考えられる。



(本投稿はパロディです)

2012年12月8日土曜日

マイナンバー法案第24条第1項

第二十四条 行政機関が保有し、又は保有しようとする特定個人情報(第二十一条に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、行政機関個人情報保護法第八条第二項第二号から第四号まで及び第二十五条の規定は適用しないものとし、行政機関個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる行政機関個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

2012年12月2日日曜日

マイナンバー法案勝手逐条解説:第3条第2号


第三条 個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として行うものとする。

二 情報提供ネットワークシステムその他これに準ずる仕組みを利用して迅速かつ安全に情報の授受を行い、情報を共有することによって、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること。

本条は、個人番号及び法人番号を利用する際の心構えについて規定するものである。本条の最大の特徴は主語が明示されていないことである。これは、基本理念を示す条項において一般的な特性である。行政庁及び独立行政法人等は、本条の対象か否かを自ら判断することが求められる。また、簡易な手続きを設けるためには新たな法律や既存の法律の改正が必要な場合もあり、行政機関における法制に関する事務の実施に際してや立法府に対するメッセージでもある。ただし、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者に対する義務を規定していると解してはならず、立法趣旨を示したものと理解すべき条項である。

本条第2号は、行政庁及び独立行政法人等の間で、給付と負担の適切な関係の維持に資する場合には情報の共有を進めるべきことを示している。同条第3号では、従来であれば場合に、既に他の行政庁及び独立行政法人等に同一の情報が提出されている場合には、情報の提出を求めることを避けるべきことが示されているので、本号の規定は、特に個人又は法人その他の団体に情報の提出を求める必要がない場合であっても、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資する可能性がある場合には情報の共有を進めるべきことが示されていると解する必要がある。

一方で、本号は行政庁及び独立行政法人等に、独自に給付と負担の適切な関係を判断する裁量権を拡大していると解してはならない。給付と負担の適切な関係の維持のために必要な事務は法及び法で受権された政令・省令で定められるべきものであり、給付及び負担の適切な関係の維持に必要な事務は法及び政令で具体的に定められることが本来である。したがって、実際には本条第3号に基づいて情報の共有は行われることとなる。したがって、本号は立法趣旨を提示したものであり、行政庁及び独立行政法人に具体的な努力目標を提示していると解すべきものではないといえる。立法府が自ら立法府に対して示した努力目標といえる。

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